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 相続時における不動産を巡る法律問題


幣所代表弁護士鈴木軌士が2016年3月23日(水)に横浜の不動産オーナーの方々のための「相続時における不動産を巡る法律問題」と題したセミナーを行いました。

 

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日時 2016年3月23日(水
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会場

開港記念会館

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講師 鈴木 軌士
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セミナー名 横浜の不動産オーナーの方々のための「相続時における不動産を巡る法律問題」
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主催 弁護士法人タウン&シティ法律事務所
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詳細 下記参照
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セミナーの様子
 
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横浜の不動産オーナーの方々のための「相続時おける不動産を巡る法律問題」

                                                             
平成28年3月23日実施
                 (主催者)
                〒231-0021 横浜市中区日本大通14番地
                       KN日本大通ビル2階
                     弁護士法人 タウン&シティ法律事務所
                                   TEL 045-650-2270
                                                          FAX 045-650-2271
                          代表弁護士 鈴 木  軌 士
 

第1 相続のパターン


1 遺言書のない場合
遺言書…遺言とは?→死亡した者の終局的意思を表すもの。我が国では要書面(=録音や録画では現行法上ではダメ。将来的には採用の検討もあり得るか?)。法的には、次の4つが認められている。

 (1)自筆証書遺言
自筆で作成する遺言。自筆が求められるのは、住所や署名欄だけでなく、日付も本文部分も、要は文書全てが自筆であることが求められる。言うまでもないが、自筆なので最も簡単に作成できるが、同時に筆跡や作成当時の意思能力等を巡って有効・無効を後に争われる可能性が最も高い。

(2) 公正証書遺言
公証役場で公証人に全文を作成してもらうもの。遺言者は被相続人であるが、遺言書の作成者自体は公証人となる。→遺言者が万が一署名等できない場合でも、遺言意思を公証人が確認できるならば作成はできる。
作成のためには証人が2人必要。実務的には、将来、遺言が効力発生した場合の遺言執行者に選任される弁護士とその事務所の勤務弁護士または事務員が証人になることが多い。証人を親族とする場合には、要注意。→そもそも法律上の利害関係がある親族(=法定相続人や、遺言により財産を貰える可能性のある者等)は、当然であるが証人にはなれない。このような利害関係人は、遺言書作成の際、立会いすらできないのが通常。
公証人が作成するので、有効・無効を後に仮に争われても「無効」と判断される可能性は極めて低いが、ただ、最近では、認知症の者等を抱き込んで遺言書を作成させるようなケースが相次いており、意思確認が不十分だったり、証人をも含めて全てが「利害関係人」等や同「的」な者であり、上記「抱き込み」的に遺言書を作成したと評価された場合には、仮に公正証書遺言でも「無効」という裁判結果が大阪で相次いで出された。その結果、公証人による(本人確認はもちろん)遺言意思の確認が、従前以上に非常に厳格になってきているのを実務上、感じる。

(3) 秘密証書遺言
自筆証書を封書に入れて開封せずに内容を秘密にしたまま、遺言書を作成したことだけを公証役場にて公に証明しておいてもらう方式。そもそも公証役場を利用する場合には、上記(2)の公正証書遺言を用いるので、この(3)の方式をわざわざ使うことは極めて稀であると言える。
文書の作成自体を自筆で行いたいことに強いこだわりを持つ場合や内容の秘密の維持は一応保証されること、公証人へ支払う費用が安く済むこと等がメリットか?

(4) 危急時遺言
船舶の遭難時等の危急時に、船長の証明等を要件に有効とされる遺言。ただ、実務的には、そもそもこのような危急時事態、余り遭遇しないということもあり、ほとんど目にする機会がない。


☆ 不動産に関して問題となる遺言書は、(1)の自筆証書遺言と(2)の公正証書遺言の2つがほとんどと思われる。
→両者の違い(メリット・デメリット)

①  費用
→自筆証書の方が安い。
②  時間・手間
→自宅等でいつでも作成できるので自筆証書の方が圧倒的に便利。
  但し、予め予約すれば、公証人に自宅や施設等に出張して作成してもらうこともできる。
→自筆証書遺言は、登記申請のためには、家裁で遺言書の検認手続(※)を経る必要がある。
※検認手続=遺言書の外観・体裁や形式等を一応チェックし、遺言書自体の混同等を防ぐことを目的に後日のために証拠化する手続。よって、法律上の効力を認められるか否か(=有効か無効か)が決められる手続ではない。これは、遺言の無効確認の訴えという訴訟手続で決められる。検認手続を経ると「検認調書」という書面が家裁から交付される。自筆証書遺言で登記申請をする場合には、この検認調書を申請書に添付する必要あり。
③  紛争となる可能性
→上記のとおり作成が簡易な反面、全文本人の自筆等、厳格な要件を要求されることから、自筆証書遺言は、その有効性を巡って紛争となる可能性が高い。
※公正証書遺言も、既述のとおり大阪等で無効とする判決が出たりしたが、そのために最近は公証人も以前にも増して有効性のチェックを厳格に行うようになってきているので、今後、公正証書遺言で有効性に問題がある事案が増えるとは思われない。
④  有効性判断のチェックポイント
→a) 署名の自筆=筆跡が本人のものか?←作成当時の、特に作為性の入る余地の少ない文書(日記・メモや手紙等)等を参考にする。=たとえ親族でも「代筆」は絶対にダメ!一部でも「代筆」部分があれば、それが非常に重要な部分(例えば署名部分や日付等)であれば、全体が無効になる可能性がある!!
 b) 日付の重要性=最後に作成されたものが最終版となるため、日付は非常に重要。これ(作成の前後)が確定できなければ、結局全てが無効になることも。あと、次のc)の意思能力の有無の判断時期とも絡む点でも重要! 
 c)  意思に基づき作成
ア 筆跡等に乱れはないか?→文字の乱れは、作成当時における精神的・身体的状態を裏付ける一つの客観的証拠。
イ 内容がおかしくないか?→余りにも合理性のない内容(例:財産分けのバランス等がどう考えてもおかしい等)の場合には、本当に本人の意思に基づくものかを疑いたくなる。
⇔但し、「無効」を主張する者に「不利な」内容というだけでは当然であるが「不合理」であるとは言えない。要は、受遺者等と本人との生前における関係等に鑑み、あくまで客観的に(=一般人から見て)合理的な内容かどうか、という点から判断される。
→基本的には、生前により親しかった者、より貢献した者へ手厚く「財産分け」というのがセオリーだが、貰う側が生活には全く困らなかったりすると、逆に全く縁の無かった者でも困っている者や事前事業(ボランティア団体や宗教団体等)へ寄付したりすることも結構ある。
※ 特に、宗教団体への寄付の場合には、いわゆる経済的合理性等はもちろん、家族関係的合理性等も通用しない場合も出てくるため、遺言書の有効性を巡って、遺された相続人との間でトラブルとなっている事案が多い。
   

以上述べたような遺言書がない(あるいはある=「存在」はしているが「無効」な場合も含む)場合には、以下で述べる遺産分割をすることになる。


A 遺産分割
(ⅰ)協議分割(分割合意(協議)書)→「合意書」なので、契約書等の文書の有効性と同じ基準でその有効性が判断される。
※2者間の契約書との違い=遺産分割協議は、必ず相続人全員の合意が必要(=必ずしも一度に全員の合意が成立する必要はないが、最低限「持ち回り」での合意は必要)よって、相続人のうちの誰か一人でも協議に欠けていたり(例::行方不明)、反対していたりした場合には、協議=合意全体が無効となる。
問題点:登記用等によく用いられる、各相続人ごとにばらした(=各相続人単独でしか署名・押印を貰わない書面)「遺産分割合意(協議)書」の有効性→一概に「無効」として扱うべきではない=実務では法務局も一応受け付けてはいるはず。ただ、各相続人によって内容が異なる体裁になっていたり等、各相続人の合意(協議)内容に疑義をもたせるようなものは有効性が否定される可能性が高い。→少なくとも、このような疑義をもたれるような形では作成するべきではない→各相続人全員の署名・押印が揃っている(=連署)文書を、原本で少なくとも1通は作成(理想は各相続人の人数分を作成)し、コピー(または原本)を各相続人に交付し保管させるべき!!

(ⅱ)  調停分割(調停調書)→調停も、家庭裁判所の手続中でなされるという点以外は、相続人全員の合意に基づくという点では、上記(ⅰ)の遺産分割協議と基本的には同じ。
→遠隔地で出席の意思もない相続人でも成立する調停条項への合意は必要→このような相続人へは、成立する期日よりも前に家裁から文書を郵送し、条項に対する合意を貰う方式もあり。⇔もちろん、欠席する相続人が代理人(基本的には弁護士)を就けてくれればなおよい。

(ⅲ) 審判分割(審判書)→上記(ⅰ)の調停が成立しなければ、審判に移行し、審判期日を経た後に、家裁の裁判官により審判が下され、その審判書に沿って遺産分割が行われることになる。
Cf.審判において審理される事実関係→分割の内容や方法であるが、これに関して、特別受益の主張・立証がなされていればそれが、寄与分の主張・立証(但し、寄与分については、遺産分割審判とは別に寄与分の審判を求める申立てが、調停不調日から1ヶ月以内に必要)がなされていればそれが、審理の対象になる。
B その他のパターン


2 遺言書のある場合
A 指定分割
(ⅰ)「~に相続させる」旨の記載
以前(~平成18年4月1日)は、少なくとも登記の際の登録免許税の関係では、「遺贈」に比べ「相続」を登記原因にする場合の方が安かった(=遺贈は1000分の20:相続なら1000分の4)ため、「遺贈」ではなく「相続」が好んで用いられた。⇔しかし、現在は、遺贈のうち法定相続人へのものは「相続」と同様に扱われるため、この登録免許税上での差異はない。

(ⅱ)メリット・デメリット
登録免許税上でのメリットは上記のとおりなくなった。あとは法定相続人に対してでも「相続させる」ではなく「遺贈する」と記載することで負担付遺贈とかも考え得る点、等がメリットか?

(ⅲ)  「~に取得させる」旨の記載
登録免許税関係で上記違いがあった場合には、遺贈か法定相続かで認定分けする意味はあったが、その意味は上記のとおり、かなり薄まった。しかし、上記のとおり、例えば負担付遺贈と解釈することができるか否かの点では、未だにこの記載が遺贈か法定相続かで認定分けする意味はある。

B 遺贈
(ⅰ)「~に遺贈する」旨の記載(包括・特定)→登録免許税の点は上記のとおり。
包括遺贈の受遺者は、(法定)相続人でない場合でも、法定相続に関する規定が準用される(民法990条)。
(特に)特定遺贈についてであるが、死因贈与は契約だが遺贈の規定が準用されている(民法554条)。

(ⅱ)メリット・デメリット
登録免許税の点は上記のとおり。あとは、遺贈だと「負担付」との構成も可能となる点がメリットか?

(ⅲ)遺留分との関係
遺留分の算定の基礎とされるみなし相続財産には、遺贈された財産も当然、加算される。

(iv)遺言執行(者)→選任の有無→有
遺贈を実行するのは具体的には遺言執行(者)=登記義務者⇔登記権利者は受遺者。
Cf.(選任)無:遺贈は、不動産を貰いたい受遺者側から(遺贈)登記の申請をしたい→登記義務者=各法定相続人⇔登記権利者は受遺者。∴遺贈登記は上記のとおり、一応、共同申請。登記原因証書=言うまでもないが遺言書。但し、遺言書が自筆証書遺言の
場合には、要:検認調書。


第2 「相続」登記を巡る問題


1 登記前にやるべきこと
a)法定相続分でない持分割合にするまで可能か?(=遺産分割が登記前に可能か?)
→可能=「相続」登記前に法定相続分とは無関係に各持分割合を決められる。
→この場合には、決められた各持分割合で登記申請をし、そのとおりに登記が入れられる。
→この場合の登記原因は「相続」となる。
→イメージ的には、死亡と同時に、法定相続分でない新たに決められた各持分割割合にて承継された、というもの。
→登記申請は、法定相続人のうちの誰でも(=取得する持分割合が法定相続分から増える減るに関係なく)単独申請可能。
→もちろん、法定相続分とは異なる持分となったことを証明するため、登記原因証書として(実印押印済の)遺産分割協議書及び相続人全員の印鑑証明書の添付が必要に。

b)遺産分割が可能として、分割まで時間を要する場合のリスク
協議が相続人全員の間で整うのであれば、上記aの手続によればよい。
問題は、協議が整わないうちに、時間ばかり経過していく場合。
→相続登記は、法定相続人の誰か一人からでも単独申請が可能なので、協議整わないうちに相続登記の申請をされるリスクがある(=法定相続人のうちの1人から単独申請される相続登記の問題)。
但し、上記のとおり、法定相続分と違う持分で相続登記を申請する場合には、必ず実印押印済の遺産分割協議書及び相続人全員の印鑑証明書が求められることから、これが用意できない場合には、あくまでも法定相続分での相続登記申請が可能なだけ。←上記遺産分割協議書&印鑑証明書の要求が担保になってはいる。⇔協議書も偽造の可能性はあるし、印鑑証明書も不正取得の可能性はある。
あと、仮に法定相続分での相続登記だったとしても、法定相続分については、各相続人は単独で第三者に売却等譲渡できるため、このような譲渡の上で所有権移転登記をされてしまえば、この譲渡された法定相続分については、第三者に対抗できなくなってしまう!!

c)単独申請相続登記を経由される前に可能な対抗(保全)手段
敵方となるべき法定相続人の中の一人ないし複数が法定相続割合での相続登記を入れてしまい、法定相続分を譲渡してしまえば終わりだが、これ自体は合法だし防ぎようはない。
よって、対抗(保全)手段としては、むしろ、こちらが法定相続分での相続登記の申請を急ぎ、仮に遺産分割等により法定相続分以上の割合の持分を取得できることが決まっており書面化等されるなら、これに基づき、自己の(追加)取得できる持分について例えば持分権の処分禁止の仮処分の申請をしておくこと等が考えられる。 


2 登記後にやるべきこと
a)登記と実体(遺産分割または遺言の内容)が合致しているかを確認する。
→法定相続分どおりであれば、通常は明白。
→問題は、遺産分割または遺言の内容が法定相続分どおりではない場合。
⇒仮に登記は経由していたとしても、稀ではあるが、実体からすれば本来入れられるべきではない登記が経由されている場合もなくはない。
∴実体を証明する書面と登記等を持参して、弁護士等の専門家に相談して判断を仰ぐべき!!

b)合致していない場合に、合致させるために執れる手続
(ⅰ) 持分の更正登記=登記原因は「錯誤」。登記費用も低額で済む。但し、 更生登記の前後で、共通の人物の名前が入ることが「持分の」「更生」登記  で申請できるための要件。→相続の場合には、基本的には、更生登記の前後 とも法定相続人同士であることが必要と思われる。共通の人物の名前が入ら ないのであれば、次の(ⅱ)(ⅲ)による他にない。 

(ⅱ)持分の移転登記請求権(※)
※相続登記経由後の遺産分割等により(増えた)持分の移転登記を求める場合。
この場合の登記原因は「遺産分割」。
「遺産分割」を売買等と読み換えれば、登記申請に関する事項(=登記権利者と義務者、登記原因、登記原因証書等)は、通常の(所有権の)持分の売買に関するものと同じ。

(ⅲ) 持分の抹消登記請求権 (cf.「真正なる登記名義の回復を原因として」→登記上の権利変動が当初から誤っていた場合で、かつ修正の前後で共通の名前が入らない場合には、基本的には、この登記原因で誤った登記の抹消を求めるのがスジ)
上記(ⅰ)(ⅱ)(ⅲ)のいずれも、登記を経由しなければその登記原因となる実体を、これと矛盾する登記を経由した第三者に対抗できなくなる点は同じ。

但し、できない理由について、上記(ⅰ)だけは違う(更生登記の前後で共通の名義が入ることが必要だから=第三者が登記を経由した時点で、この要件が充たされなくなる)。

第3 「相続」と税務


不動産オーナーの事業承継も絡めて、次回以降に詳説します。

ポイントだけ挙げておくならば、以下のとおり。

(1) 生前贈与を選んでおくべきか?

(2) 「相続」以外の方法を検討すべきか?
a)例:離婚による財産分与
b)新:「家族信託」の活用等
c)会社(法人)化されているのであれば、その持分権(例:株式会社における株式)を活用した節税等スキームについて→例:種類株式の活用等

(3) 生前の養子縁組の活用等

(4) 遺言で承継を段取り→遺留分に対する配慮も。

(5) 遺留分については、遺留分放棄に関する手続の活用も考える。

(6) 大切なこと→優先順位を考える!
①会社や会社の資産の保全を考え事業の継続を考えるのか
②相続人も含めた家族間での調和や家族への資産承継を重視するのか
いずれにせよ、税金支払は最低限の義務だが、支払額は最小額にしたい!
上記①②のいずれを優先するにせよ、きちんとした税務対策は最低限必要に!!
⇒最低限、税理士への相談は必須。トータルコーディネイトを広範にできるのは今のところ、不動産も含めた資産関係一般に強い弁護士だと思われる。

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